消防士が不動産投資で自己破産することはあるのか?

将来を見据えた資産形成のために、不動産投資に注目する消防士が増えています。

しかし、興味はあってもなかなか一歩を踏み出せないという人も多いようです。その理由の1つが、不動産投資は融資を受けて、つまり借金をして行うものであること。

「多額の融資を受けて投資をして、もし失敗したら……」

そう考えてしまうのも、無理のないことです。

一般的には、もし投資に失敗した場合、最悪では自己破産という事態に陥ります。そこで今回は、消防士が行う不動産投資をテーマに、そのリスクや自己破産の可能性について見ていきたいと思います。

不動産投資で失敗すれば、自己破産に陥る恐れはある

本記事のタイトルに対する結論を先に述べておくと、消防士に限らず、融資を受けて行う不動産投資においては、その失敗によって自己破産に陥るリスクはあります。それは、自己資金を用意していない状態で、購入物件の代金を100%融資でまかなう、いわゆる「フルローン」で投資を何件も重ねていたような場合です。

こういった場合、収入と融資返済とのバランス、いわゆるキャッシュフローがギリギリになるため、何か大きな手違いやトラブルがあると、いきなり毎月の収支が大きく赤字になるためです。

そうならないために大切なのは、不動産投資がどんな投資であるのか、また、どんなリスクがあるのかを正しく理解して、そのリスクを見込んだ余裕のある資金計画で投資をスタートすることです。

ローンによるレバレッジ効果で利益を大きくできるメリット

一般的に、不動産投資では銀行の融資(不動産投資ローン)を受けて、その資金で投資物件を購入し、その物件を賃貸して得られる家賃収入で融資を返済していきます。

融資を受けて不動産に投資ができ、その後の賃貸経営ができることは、投資効率という観点から考えると、メリットになります。

例えば、1,500万円のマンションを購入する際に、自分で1,500万円の資金を用意して投資をした場合を考えます。仮にそのマンションを保有している期間に、総額で1,500万円の純利益が得られたとしたら、利益率は100%です。

一方、自己資金を300万円用意し、1,200万円の融資を受けて、そのマンションを購入したとします。すると、自己資金300万円に対して1,500万円の利益ですから、500%の利益率になります。もっとも、融資には金利を支払わなければなりません、仮に金利が600万円だとすれば、純利益は900万円になります。それでも、自己資金300万円に対する利益率は300%になります。

もし、1,500万円の自己資金があるとしたら、300万円を頭金にして、1,200万円の融資を受けた投資が、5戸可能になるかもしれません。そうすれば、1,500万円の自己資金の投資で、純利益は4,500万円になるということです。融資を受けずに1,500万円の自己資金だけでマンションを購入した場合の3倍の利益です。

このように、融資を受けることで、効率的に資金を活用できることを、「レバレッジをかける」と呼びます。レバレッジをかられることは、不動産投資の大きな魅力の1つです。

投資にレバレッジをかけるとリスクも大きくなる

ただし、レバレッジは利益も大きくする代わりに、リスクも大きくさせます。

上の例だと、自己資金だけで投資をした場合、もし入居者が入らずに、家賃収入が0になったとしても、消防士としての給与があれば、自分の生活は困らないでしょう。最悪、売却してしまえば投資の成果はマイナスにはなるでしょうが、いくらかのお金は返ってきます。

一方、1,200万円の融資を5件受ければ、6,000万円の借金ということになります。毎月の返済額は、返済期間などの融資条件によっても異なりますが、ここでは毎月30万円の30年返済だとしましょう。

仮に5戸のすべてが空室になって家賃収入がゼロになったら、自分の給与から毎月30万円を返済していかなければなりません。これはかなりきついでしょう。5戸全部が同時に空室になる可能性は極めて低いですが、たまたま運が悪くて2戸や3戸が同時に空室になる可能性は、十分あり得ます。

そうなれば、消防士としての給料からのかなりの額を支払わなければならないでしょう。

長期間空室が続く物件なら、いっそ売ってしまおうかと考えても、ローンの残債が残っている場合、それを清算しなければ基本的に売却できません。売るに売れないのです。

もしそんな状態が続いて、返済ができなくなれば、あとは自己破産をするしかない、ということになります。

つまり、レバレッジを大きくかけると、大きな利益を得られる可能性もある代わりに、大きな損失を招く危険性もある、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」になるということです。

そのため、何があっても融資を返済できるという前提での資金計画を立てることが、不動産投資における大前提になります。

不動産投資で自己破産への危険が高まるケース

無理のある資金計画で不動産投資を始めた場合、何かのきっかけで自己破産への道を進んでしまうことになります。

以下のような状態に陥ったら「黄信号」が灯っています。早急になんらかの抜本的な対策を打たないと危険でしょう。

月々の返済が、家賃収入の合計の50%を超えている

家賃収入に対するローン返済の割合を返済比率といいます。基本的に返済比率が50%を超えると危険水準と覚えておきましょう。できれば40%以下に抑えるのが理想です。

これは投資家によって考え方が別れる部分であり、中には60%まで大丈夫という人もいますが、レバレッジのリスクを抑えるという観点からは、高くても50%以下、なるべくなら40%以下を目安にするといいでしょう。

空室期間が4カ月を超える

不動産投資における空室は、自己資金を垂れ流ししている状態と同じです。

前の入居者が退去後、空室期間が4カ月を超えるのは、かなり危険であり赤信号に近い状態であると思って下さい。

空室期間中のローン返済や経費の支払いはすべて投資家の負担となります。賃貸業者に営業をかける、現代的な内装にリフォームするなど、早急に対策を取る必要があります。

一度に発生する修繕費が手元資金を超えると危険

修繕費は大きなものから軽微なものまでありますが、一度の修繕費が手元資金を超える額になるのは危険です。

大規模修繕の場合、物件によりますが、2~300万円の出費が発生することもあります。毎月の家賃収入から、そのための資金をしっかり貯めておけばいいのですが、うっかり使ってしまっていることも珍しくありません。

まとめ

無理のない資金計画を立てることは大前提ですが、それと同時に、長期の空室期間が出ないような、集客力のある物件を選んで投資することも大切です。そのためには、事前の情報収集と信頼できる業者を見つけることが大切です。

安定した給与が見込める消防士だからこそ、しっかりした資金計画が必要です。信頼できるパートナーと一緒に不動産投資を始めることで、自己破産に陥るリスクを最小化しましょう。