いまニーズが上昇「事故物件」が投資になる!?

不動産投資に興味がある人であれば、「事故物件」という言葉はどこかで目にしたことがあるでしょう。

「そもそも、入居者が死亡した部屋は、すべて事故物件になるのだろうか」
「事故物件でも気にしない人もいるが、事故物件に投資はできるのだろうか」
「不動産投資をした部屋が、事故物件になったらどうしよう」

本記事では、このような疑問にお答えします。

事故物件とはどんな物件?

事故物件とは、「心理的瑕疵(かし)」が伴う物件のことです。

瑕疵とは欠点のことですが、この場合の心理的瑕疵とは「借主、買主に心理的な抵抗が生じる恐れのあること」とされています。言い換えると「事前にそのことを知っていたら『借りたり、購入したり』する契約をしていなかった」と思われる事柄を指します。

具体的には、他殺や自殺、火災などにより、入居者や前所有者が死亡していたことなどが挙げられます。

以前は、事故物件の定義や、どんな場合にはそれを告知する必要があるのかなどが曖昧でしたが、2021年10月に国土交通省よりガイドラインが発表され、線引きがおこなわれました。

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf

「ガイドライン」では、以下のように定められました。

 死因告知
事故物件に該当する・他殺 ・自殺 ・火災による死亡 ・発見が遅れた自然死や事故死売買:必要   賃貸:おおむね3年以内の事項の場合、必要
事故物件に該当しない・自然死 ・病死、老衰 ・不慮の事故 (転落・溺死・誤嚥など)売買:必要なし   賃貸:必要なし

ポイントは、「病死や不慮の事故などの自然死は事故物件に該当しない」という点です。これは日常生活において当然に予想されるものとして心理的瑕疵に当てはまらないとされました。

例えば、持病の悪化によって亡くなった場合は、自然死です。しかし、その死亡の発見が遅れた場合は、心理的瑕疵に該当して事故物件になります。なぜなら、発見が遅れると体液がしみ出したり異臭が染みついたりして、その部屋に「住みたくない」という心理的な抵抗が生じるためです。ただし、発見までの明確な期間はガイドラインでも提示されておらず、特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、心理的瑕疵に該当するとされています。

不動産が事故物件になると、売り手や貸し手は、買い手や借り手に対して告知をする義務があります。賃貸の場合はおおむね3年以内に生じた事項に告知が必要ですが、売買の場合は期限なくさかのぼって告知する必要があります。

投資したマンションが事故物件になってしまったら、もうおしまい?

もし、投資物件として購入したマンションの部屋が、事故物件になってしまったら「もう、おしまいだ」と思われるかも知れません。

しかし結論から言うと、まったくそんなことはありません。なぜなら、事故物件になったとしても賃貸で貸し出せますし、売却もできるからです。

事故物件の賃貸について

事故物件になったとしても、綺麗に清掃され、割安感があれば借りたい人は必ずいます。

もちろん賃貸についてはおおむね3年間は告知義務があるため、通常の賃貸募集と比べて成約率は下がるでしょう。しかし、割安感をしっかりと提示できれば空室が埋まらないことは考えにくいものです。

入居者に分かりやすい割安感は、家賃を値下げする方法です。しかし、一度下げた家賃を再度上げることは困難です。そのため、家賃を下げない方法として、一定期間のフリーレント(家賃無料)や、初期費用(敷金、礼金など)を抑えた募集条件で、割安感やメリットを提示することも考えられます。

また、外国籍の人は、日本人と比べて前入居者の死を気にしない傾向があると言われています。そのため、外国人を積極的に受け入れる姿勢で貸し出すといった方法も有効です。

また、告知義務がある3年を過ぎれば告知義務はなくなるので、事故前の状況に戻るでしょう。

いずれにしても、「事故物件になったら、もう借り手はつかない」といったことはありません。

事故物件の売却について

当然ですが、事故物件になったとしても、それで資産価値がゼロになる訳ではありません。ただし、物件内容や、エリアなどにもよりますが、相場に比べて1~3割ほど安くなると言われています。

もし、早期に売却しなければならない事情がないのであれば、事故から3年(賃貸の告知期間)以上保有をして、リフォームなどにより家賃を引き上げてからの売却を検討するといいでしょう。家賃が上がれば、利回りから逆算される売却価格も引き上げることが可能になります。

3年以上が経っても、売買の際には事故の告知義務はあります。しかし、投資用の物件として売却する場合、実需と比べて、昔の事故が大きく気にされることは少ないと言えるでしょう。それよりも、利回りがどれくらいあるかの方が重要になります。

事故物件の対策は保険加入

投資した不動産が事故物件になったからといって、過度に悲観的になる必要はありません。しかし、できれば事故物件にならない方が良いことも確かです。

残念ながら、若い入居者でも自殺をしてしまうケースもあります。どんな入居者でも事故が生じる可能性はあるので、事故物件になることを完全に防ぐことは不可能でしょう。

そこで、オーナーがとれる対策としては保険に加入することです。いまは「孤独死保険」などの、事故物件に対応した保険があります。単体で加入することもできますし、火災保険の特約として付けられることもあります。

保障内容は、事故後の原状回復費用の保障や空室、値下げ家賃の保障など各社によって様々です。年間数千円の保険料で加入できるプランもあるため、事故物件のリスクヘッジとして加入を検討するべきでしょう。

事故物件のマンションに投資をしても大丈夫?

これまでは、購入した投資用物件が事故物件になってしまった場合の話をしてきました。

一方、最初から事故物件だと分かっている物件は、投資対象にはならないのでしょうか?

不動産投資は、「利回り」でその収益性が決まります。つまり、事故物件で家賃収入が低いというデメリットがあったとしても、その分投資金額が低ければ、十分投資対象になるということです。

すでに説明したように、事故物件でも適切な対応をすれば賃貸も売却も成立します。要は、メリット・デメリットを理解して、適切な対処をすればいいのです。

事故物件に投資する場合のメリット、デメリット(注意点)

具体的に事故物件に投資する場合のメリット、デメリット(注意点)を確認します。

事故物件に投資するメリット

・周辺相場より安く買える場合が多い(自己資金が少なくても投資可能)
・価格交渉でさらに価格を引き下げられる可能性が高い
・大規模リフォームがされたことで、室内がキレイになっていることが多い
・入居の入れ替えにより賃料アップを狙える可能性がある

事故物件に投資する場合のデメリット(注意点)

・売却時には、何年経過しても告知が必要で、相場よりも低い売却価格になる可能性が高い
・賃貸時の告知期間を過ぎても、入居者が限られることがある
・安い賃料のまま長期間入居される可能性がある
・実需の物件としては、嫌悪感を持つ人がいる

まとめ

所有不動産が事故物件になってしまうリスクを避けることはできません。しかし保険加入などの対策をすることで、経済的な損失に備えることは可能です。

事故物件になったからといって、賃貸入居者がまったくいなくなるということは、通常考えられません。

利回りと価格を慎重に計算した上で、事故物件に対して積極的に投資をするという考え方も可能です。ただし、適切に取り扱うために、国土交通省の「ガイドライン」には、必ず目を通しておきましょう。