20代独身の消防士の方は、あまり保険に加入をする必要がないかも知れません。それにも関わらず、生命保険の営業の熱心な勧誘を受けて、お付き合いで保険の加入をしている人が意外と多いようです。
若い消防士にはピンとこないかも知れませんが、老後に用意すべき生活資金の金額を考えると、無駄な保険にお金を払う余裕はあまりないというのが本当のところです。この記事では、20代独身の消防士に必要な保険について解説しています。
年金+退職金だけでは老後の豊かな生活は難しい
20代独身の若い消防士は、毎日の仕事やプライベートの楽しみに夢中で、老後のことなど考えたこともないという人が大半でしょう。
しかし、どんな人も必ず歳を取り、やがて老後生活を迎えます。そのときに、後悔しないためには若いから少しずつ資産形成を考えておく必要があります。
老後2,000万円不足問題として話題になった、「金融審議会市場ワーキンググループ報告書」のことは、どこかで聞いたことがあるでしょう。仮に定年退職まで勤めて、年金を満額もらえるとしても、老後資金が2,000万円不足するというものです。
実は、これは「普通程度の暮らしをする」ということが前提になっています。
令和元年度に生命保険文化センターがおこなった調査によると、ゆとりある老後生活を送るために、最低日常生活費以外に、月14万円が必要といわれています。つまり、一般的な夫婦無職高齢世帯では、毎月14万円の貯蓄を取り崩すことになります。30年続けば、14万円×12ヶ月×30年=5,040万円にのぼります。(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1141.html)
消防士の平均的な退職金額は2,000万円程度なので、これをまるまる老後資金に投入したとしても、約3,000万円の不足額が生じることになります。
資産形成は長い時間をかければかけるほど、楽になる
2,000万円、あるいは3,000万円という大金を短期間で用意するのは大変です。しかし、幸いにも20代のうちにこのことに気づき、準備を始めれば、かなり楽に実現できます。
なぜなら資産形成には「複利効果」というものがあるためです。複利効果とは、利息に利息がついて、時間をかければかけるほど効率的に増えていく効果のことです。いわゆる「雪だるま式」に増えるというものです。時間をかけるほど有利ということは、定年の時期は決まっているので、資産形成の準備を若い内に資産形成の準備を始めるほど有利、ということになります。
仮に、さまざまな投資商品への投資により、年利回り3%での運用が可能であると仮定すると、毎月4万円を積立運用していけば、35年で3,000万になります。いま、25歳の消防士の方なら、ちょうど60歳で3,000万円が作れるのです。これと退職金の2,000万円を合わせれば、かなり豊かな老後生活も実現できるでしょう。
これは、35年という長い時間をかけて複利運用の効果を享受しているからこそです。月4万円なら、少し頑張れば実現できると思いませんか?
中には、「月4万円なんて、とても無理」と思われる方もいるでしょう。もちろん、その場合は、1万円でも2万円でも、無理なく続けられる範囲から取り組めばいいのです。
節約は固定費の見直しが有効
しかし、実は毎月無駄に支払っている固定費を見直すだけで、余裕資金が捻出できることがあります。節約のもっとも効果的な方法は、毎月支払額がある程度決まっている固定費から見直していくことなのです。
代表的な固定費としては、家賃や水道光熱費、スマートフォン代金や、最近はやりの定額払い(サブスク)のサービスなどがあります。中でも、もっとも見直しの余地が大きく、また手軽に見直せる固定費は生命保険だといわれています。
若い消防士は署に出入りしている保険会社の営業担当者の標的になりやすい傾向があります。熱心な営業活動に心を動かされて、お付き合いでおすすめされた生命保険にそのまま加入してしまうということも珍しくありません。しかし、それらの保険は本当に必要なものでしょうか?
20代独身消防士に必要な保険とは
生命保険は、自分に万が一のことがあったときに誰に経済的負担がかかるのかを考えて加入することが大切です。ここでは20代独身消防士のケースで必要な保障について考えてみましょう。
生命保険が必要か?
一般的に生命保険とは、自分が死亡した際に、遺族の生活費として生命保険金が支払われるというものです。独身消防士の場合、自身が死亡しても経済的に困る人は誰もいないと考えることができるので、生命保険は必要ありません。用意しておくとしてもせいぜい、両親に葬式代で迷惑をかけない程度でしょう。しかし葬式代なら200万円程度もあれば、不足することはありません。職場からの支給される死亡退職金や貯金だけで十分ではないでしょうか。
医療保険は必要か?
医療保険は、自分の病気やけがなどで、入院や手術などをした場合に給付金が支払われる保険です。消防士は危険な業務に従事しなければならないこともあるため、医療保険が必要だと考える方もいるかもしれません。
しかし、消防士の業務中のケガなどは労災保険が適用になります。労災保険は療養給付により、医療費は100%給付されます。また、ケガで休業しなければならなくなっても、休業4日目からは、1日につき平均賃金の80%相当額が支給されます。
さらに、業務とは関係ない病気などにより多額の医療費がかかったとしても、公的医療保険制度の高額療養費制度の対象となれば自己負担は少額で済みます。収入によって自己負担額は異なりますが、目安として、100万円の医療費がかかったとしても、自己負担額は8万円前後で済みます。
20代のうちは、ガンや脳卒中、心筋梗塞といった大病を患う可能性も低いため、医療保険の必要性も疑問です。
就業不能保険・所得補償保険
医師から就労不能状態と診断された場合に、働けなくなった分の収入を保障する就業不能保険や、所得補償保険という保険があります。しかし、消防士はケガやメンタルの不調で働けなくなることもあるかも知れませんが、業務中に発生したものが理由であれば労災が適用になります。
また、業務外の事故であっても傷病手当金で収入のうち一定額まで、1年6ヶ月を限度に傷病手当金が支給されます。メンタルの病気の場合は、必ず労災が認められる訳ではありませんが、消防士は働けなくなったときの補償も十分手厚いため、独身の方が就業不能保障保険・所得補償保険といった備えをする必要性はほとんどありません。
過剰な生命保険に加入している余裕はない
保険会社もビジネスですから、様々な新商品を開発し、それを営業担当者が販売しています。しかし、20代独身の消防士の場合、公的医療保険制度や労災制度で必要な保障がほぼ得られるため、保険に加入する必要はないケースがほとんどです。
もし、「たった数千円だから」という理由で、お付き合いで加入している生命保険があるならすぐに見直し、その分を資産形成にまわしたほうが、将来の後悔が少ないと思われます。
不動産投資も検討してみましょう
生命保険の見直しで浮いたお金を数年間貯蓄して、ある程度まとまった資金ができたら、不動産投資に挑戦することもおすすめです。不動産投資は、入居者がいる限り安定した家賃収入が毎月、副収入として入ってきます。
また、定年退職後、あるいはその前にもし消防士を退職するようなことになっても、入居者がいる限り、家賃収入が途絶えることはなく、生活のプラスになります。
まとめ
保険は、契約をすれば、万一の際に必要な保障がすぐに得られるというメリットがあります。必要な保障額が見通せているのであれば、その分だけ保険に加入することは決して悪いことではありません。しかし、この記事で見てきた通り、20代独身の消防士の場合は多額な保障額が必要となる場面は、ほとんどないといえるでしょう。
絶対に必要な保障という観点から、加入している保険を見直すことは、20代の消防士の長期的な資産形成において有効な手段だといえます。