比較的身分が安定した職業である消防士でも、ケガや病気による失職リスクは常につきまといます。また、老後の豊かな生活を考えるのであれば、投資によって資産を形成していくことが必要です。
投資にも様々な方法がありますが、本記事では比較的リスクが少なく、またとても手軽にはじめることができる「つみたてNISA」について解説します。
つみたてNISAとは?
「つみたてNISA」とは、簡単にいえば、毎月一定額ずつ「投資信託」という投資商品を購入して積み立てていく「積立投資制度」です。
積立投資制度自体は昔から様々ありますが、つみたてNISAは、国の主導によって導入された制度であり、非常にお得かつ安全です。そのため、初めて投資をする初心者でも、安心して利用できることが特徴です。
つみたてNISAは、投資信託に投資する
つみたてNISAは、銀行や証券会社などの「つみたてNISA専用口座」で、毎月一定金額ずつ、「投資信託」を購入していく制度です。
「投資信託」とは、多くの人から集めたお金で、株式や国債などの商品に投資をして、得られた利益を分配する仕組みの商品です。多くの人から集めたお金で、運用のプロが株などを売買してくれる、というイメージです。
そして投資信託は、例えば「日本株」「海外株式」「全世界株式」「海外国債」「海外不動産」など、投資する対象テーマごとに多くの種類があります。
その多くの投資信託の中から、「つみたてNISA用」として、とくに安全性が高い投資信託が集められており、それを「つみたてNISA専用口座」で、毎月買っていく、というのが、つみたてNISAの基本的な仕組みです。
つみたてNISA用の投資信託は100種類以上が用意されており、その中から例えば、「日本株式」「海外株式」など、自分が好きな対象テーマの投資信託を指定して買っていきます。購入する投資信託は、複数組み合わせることもできますし、いつでも変更することができます。
有利な非課税制度
通常、投資信託の運用益には約20%の税金が課されます。例えば、100万円の投資をして50万円の利益が出て、150万円になったとすると、50万円の約20%=約10万円が税金として徴収されてしまいます。したがって、手取りの利益は約40万円になります。
一方つみたてNISAで投資した場合、設定された上限金額までは、非課税で運用されるため、150万円をまるまる受け取れます。そのため、長い目で見ると大きな差になります。
非課税で投資できる金額、期間など
つみたてNISAで投資できる金額は、最小で月100円から最大で年間40万円(月3万3,333円)までです。
また、非課税の投資期間は最大20年間です。最大に投資すると年間40万円×20年=800万円を投資することができます。では、20年経ったらどうるかといえば、その時点で解約するか、課税口座(一般の投資口座)に投資信託を移すか、どちらかを選ぶことができます。
また、20年以内の好きなときに解約することもできます。
例えば、10年間で計400万円を投資したとします。その時点で結婚資金として200万円が必要であれば、200万円だけを解約して現金化することができます。
つみたてNISAと一般NISAのちがい
NISA制度には、つみたてNISA以外に「一般NISA」というものもあります。一般NISAは年間120万円、最長で5年間、株式や投資信託、ETF、REITなど様々な商品に投資できる制度です。利益が非課税になることはつみたてNISAと同じです。
一般NISAでの売買は通常の投資と同じで、1つの銘柄を買うために、数万円から数十万円の資金が必要です。
ポイントは、つみたてNISAと一般NISAは併用できず、どちらかを選ばなければならないことです。
自分で株式の勉強をして、銘柄選びから始めたいという人には一般NISAが、難しいことはよく分からないし、手間はかけたくない、少額で始めたいという人には、つみたてNISAが向いています。
つみたてNISAの運用シミュレーション
では、つみたてNISAで、どのように投資金額が推移するのかをシミュレーションしてみましょう。毎月いくら積み立て(毎月の積立金額)、何年間積み立て(積立期間)、年率を何%で運用すると想定し、計算します。
毎月の積立金額:2万円
積立期間:20年
年率:3%
元本(積立金額):480万円
運用収益:176.6万円
計(元本+運用収益):656.6万円
参照元:金融庁資産運用シミュレーション
(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html)
消防士がつみたてNISAをするメリット、デメリット
ここでは、つみたてNISAのメリット・デメリットを整理してみます。
つみたてNISAのメリット
つみたてNISAをする場合のメリットには、次のようなものがあります。
①最長20年間、運用益(分配益・譲渡益)が非課税で投資できる
②家計の余裕に合わせて少額から投資を始められる
③積立のため、売買タイミングを判断したり、いつも値動きを確認したりする手間がかからない
④ライフプランに応じて、必要があれば必要額だけをいつでも換金できる
つみたてNISAのデメリット
一方、以下のようなデメリットもあります。
①元本割れのリスクがある(つみたてNISAで購入できる投資信託は、元本保証がなく、マイナスになるリスクがあります)
②損失が出た場合に、損失の繰越控除や、ほかの投資などとの損益通算ができない
③非課税投資金額が20年間で800万円しかない(老後に必要とされる2,000万円をこれだけで用意することはできない)
④株式の個別銘柄などに直接投資ができない
つみたてNISAに向いている人
つみたてNISAは基本的に、投資初心者や投資経験の少ない人が「長期・積立・分散」という3原則に基づいて、手軽に投資を始められるように設計された非課税制度です。
そのため、つみたてNISAに向いている人は次のような人です。
①投資初心者
②資金に余裕がなく、少額で投資をしたい人
③仕事が忙しく、投資に時間をかけたくない
これに該当する消防士であれば、つみたてNISAに取り組んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
つみたてNISAは、国が推奨している投資制度であるため、大きな非課税優遇措置が設けられています。一般の積立投資などをするよりは、有利に資産形成ができるでしょう。
しかし、非課税投資枠が最長20年間で最大800万円という限界もあります。
いわゆる「老後の必要資金2,000万円問題」を考えると、つみたてNISAだけでなく、別の手段も検討する必要があるでしょう。
そこで、投資資金にあまり余裕がないうちは、つみたてNISAなどの運用を通じてコツコツと資産を貯め、ある程度まとまった資産ができたら、それを頭金として、不動産投資を検討するというのは良い方法でしょう。