消防士が不動産投資をする際に注意すべき「違法建築物件」とは?

不動産のプロではない消防士が不動産投資をする際に、注意しなければならないことがたくさんあります。その1つが投資対象なる物件が「違法建築物件」ではないかどうかという点です。

今回は、違法建築物件とはどのような建物なのか、また、違法建築物件に投資した場合のリスクなどについて解説します。

不動産市場では、違法建築物件も売買されている

「火災を起こした建物が違法建築物件であったために、消火活動が困難だった」
「住民が逃げ遅れるなどして被害が大きくなった」

消防士なら、仕事の中でこんな話を見聞きしたり、ご自身が経験したりしたことがあるかも知れません。

違法建築物件は、住民の生命や健康、財産を守るという観点からは不十分なものですが、不動産売買市場において売りに出されていることもあります。違法建築物件を売買すること自体は、違法ではないためです。

投資用不動産の広告を見ていると、「この物件だけやけに利回りが高いな」と感じることがありますが、そういう物件はたいてい、よく見ると「違法建築物件」や「既存不適格物件」と記載されています。(両者の違いは後で説明します)。

違法建築物件や既存不適格物件は、違法であるが故に、適法な物件よりも販売価格が低く、高い表面利回りが提示されていることがあるのです。しかし、その利回りだけ見て「安い!」と飛びつくことは危険です。結論からいえば、不動産投資の初心者が違法建築物件を購入することは、リスクが大き過ぎるのでおすすめはできません。

違法建築物件とは?

建築物は、そこに住んだり利用したりする人の生命や健康と財産を守るために大きな役割を果たすべきものです。そのため、様々な法律で規制されています。

建築物を規制する法令等には、消防士の方ならよくご存じの消防法をはじめ、建築基準法や都市計画法などの法令、さらに都道府県の条例などがあります。それらに違反している建築物が「違法建築物件」です。

「違法建築物件」の具体的なケース

・建ぺい率・容積率の規定をオーバー
・道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限に違反
・接道義務違反
・建築確認申請後に計画変更して建築
・壁界不明確・防災設備が古い

建物を建築する際には行政による「建築確認」を取得するはずなのに、なぜこのような違法建築物件が存在するのでしょうか。

建築確認の内容と異なる建築をしていた、という場合もありますし、いったん建築確認通りに完成した後で、増改築したために違法建築物になることもあります。知らず知らずのうちに違法状態になってしまうこともあれば、不動産業者が意図的に違法行為をしていた場合もあるということです。

たとえば、建物の1Fを店舗用として申請していたものの、勝手に居住用として用途を変更して作り替える場合などです。

総じて、現在よりもコンプライアンス意識が低く、行政などのチェックもすり抜けやすかった過去の時代に建てられた不動産物件に、違法建築物件が多いといえます。

違法建築とは似て非なる「既存不適格物件」

違法建築物件と似ているけれど、少し異なるものに「既存不適格物件」があります。

たとえば、建ぺい率や容積率などの規制数値は、変更になることがあります。そのため、建てた当時は適法で、かつ、増改築などの変更もしていないのに、現在の法令では違法状態である物件が「既存不適格物件」です。

違法建築物件は罰則を受けることもある

違法建築物件は、原則として、自らの費用と責任で直さなければなりません。

これらの違法状態が是正されない場合は、特定行政庁(市町村など)は、建築主や敷地所有者などに対し是正命令を出すことができます。

是正命令とは、建築工事の竣工停止、建築物の除却、移転、増改築、修繕、模様替、使用禁止、使用禁止、使用制限などの措置です。この命令に従わない場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることがあります。

一方、既存不適格物件に対しては是正命令や罰則などのペナルティが行政から出されることはありません。法律の方が後から変わったのに、それに合わせて建物を変えろというのは理不尽だからです。

ただし、建て替えの際はもちろん、増改築などの際にも、原則として現在の法令に準拠しなければなりません(一部に緩和要件あり)。

違法建築物件を購入するリスク

違法建築物件を購入することは可能ですが、様々なリスクがあります。そもそも、住民の生命の安全や健康に対してリスクが大きい違法建築物件をわざわざ買う必要があるのか、という点に疑問が生じます。

また購入に際して、原則的に金融機関からの融資が下りることはありません。つまり、キャッシュで購入しなければなりません。

違法建築物件でも、立地場所が非常に良いなどの場合は、将来建て替える、あるいは更地にして転売するといったことを見越して、購入するケースもあるでしょうが、それはプロの不動産業者の仕事であり、消防士が副業として取り組む範囲を超えているでしょう。

一方、既存不適格物件については、是正命令や罰則などのリスクはありません。

しかし、例えば容積率や建ぺい率がオーバーの状態であれば、建て替えの際、同じ大きさの建物を建てることはできません。一般的には、規制は厳しくなっている傾向なので(緩和されている部分もあります)、現状の建物よりも小さい建物しか建てられなくなることが普通です。そうなると、賃貸物件としての価値も下がります。

また、金融機関からの融資は受けることは可能ですが、上記の理由から、担保評価が低くなる(融資額が低くなる)傾向があります。

まとめ

消防士が副業で投資を行う場合には、副業だからこそ、安全性を第1に考えた投資をするべきでしょう。そう考えると、違法建築物件や既存不適格物件に投資をするのは避けるべきだといえます。適法な物件がほかにたくさんあるのに、わざわざリスクが高い投資をする必要はありません。