消防士が不動産投資を検討する際、必要な投資金額が大きく、また、普段の仕事とはまったく関係のない分野でもあるため、不安を感じることも多いでしょう。
実際、「不動産投資でだまされた」という話は、マスコミでもよく報じられます。世の中には、不動産投資のリスクや不都合な点を隠して、物件を売って手数料を稼ごうとする悪質な業者がいることも事実です。
本記事では、不動産投資で失敗しないために必ず知っておきたいリスクと、悪質な業者にだまされないためのポイントを解説します。
不動産投資に関するリスクと、人に関するリスク
不動産投資には、大きく分けると、性質が異なる2種類のリスクがあります。
タイプ1 不動産の性質そのものから生じるリスク
例えば、絶対に震災に遭わないと断言できる地域は存在しないため、震災で建物が倒壊してしまうリスクは不動産には必ずついてまわります。こういったものが不動産の性質そのものから生じるリスクです。
タイプ2 不動産にかかわる人間が悪意をもっているリスク
もう1つは、悪質な不動産業者がだまして売り付けようとするようとするリスクです。
タイプ1のリスクについては、それを絶対に避けるということはできません。ただし、適切な対応をしておくことで被害を最小限に食い止めることができます。
一方、タイプ2のリスクは、自分が注意をしておくことで通常は避けることができます。そしてそのためにも、タイプ1のリスクについてよく知っておくことが大切なのです。
タイプ1 不動産の性質そのものから生じるリスク
不動産投資は、株式投資や国債投資などの、ほかの投資と比べると、「ミドルリスク・ミドルリターン」の性質だといわれます。これは家賃収入という、確実とは言えないものの、比較的安定した収入を得られるためです。とはいえ、不動産には固有のリスクがあることも事実です。
(1)災害リスク
地震や火山の噴火、土砂崩れ、津波、河川氾濫など、自然災害によって建物が損害を受けるリスクです。
(2)不動産価値下落リスク
賃貸物件の価値は、新築時がもっとも高く、時間の経過とともに自然に少しずつ下落していきますが、周辺環境の変化などにより、通常の価値下落以上に、急激に価値が落ちてしまうリスクです。
たとえば、近所に大学があって、学生の入居需要に支えられていたのに、大学が移転してしまい、その需要がなくなってしまったりすると価値は下落します。あるいは、管理の不備により、建物の環境が悪化する場合などもあります。さらに、地域によっては想定以上に人口減少が進み、それが不動産の価値を押し下げることもあるでしょう。
(3)空室リスク
同じ建物に、近隣に迷惑をかける入居者がいたり、周辺に新しく競合物件が建てられたり、その他なんらかの理由で入居希望者が減り、空室期間が生じてしまうリスクがあります。(2)とも似ていますが、街の産業構造の変化などによって、長期的に入居者需要が減ることも考えられます。
(4)インフレリスク(金利変動リスク)
インフレとは物価が持続的に上昇を続けることですが、そうなると中央銀行(日本では日限)は金利引き上げ方向の政策を実施します。
すでに、アメリカなどの諸外国では、2022年には金利が上がると予想されています。日本ではまだ、急に金利が上がりそうな状況ではありませんが、将来はどうなるか分かりません。
一般的に、不動産は融資を受けて購入しますが、融資金利は変動金利となっていることが普通です。そのため、インフレになると、借りている融資の金利が上がってしまうリスクがあります。
(5)物件リスク
欠陥住宅や建築検査データのごまかしといった話は、たびたびマスコミでも報じられます。自分が購入した物件に、想定しなかった欠陥があったり、実は違法建築状態だったりしたら、なんらかの対応をしなければなりません。
不動産のリスクは回避、またはコントロールすることができる
上記のリスクについては、いずれも対応することは可能です。たとえば、自治体が発行している「ハザードマップ」を見れば、水害のリスクは予想できます。地震を避けることは不可能ですが、適切な地震保険に加入しておくことにより、経済的な被害は最小限に抑えることも可能です。
また、不動産価値の下落や空室リスクに対してはエリア周辺の開発計画、用地計画などを調べることである程度予想できます。周辺にある大学や企業の移転契約といったことも、突然決まることは少なく、通常は何年も前から決まっているものです。
さらに、空室リスクもゼロにすることはできませんが、投資しようとしている物件周辺で同グレードの賃貸物件の賃料や入居状況などを調べることで、ある程度の入居率や想定賃料を把握することはできます。
そこから計算すれば、物件の価格の妥当性も判断がつくので、「高値掴み」を避けることは可能です。
こんな不動産業者には要注意!
タイプ2のリスクを避けるためには、上記のような不動産のリスクについて、詳細に質問してみるとよいでしょう。
そのときに、何を聞いても「分かりません」としか答えられないような不動産業者であれば、当然ながら、取引はやめた方がいいでしょう。
また、「それは××だから大丈夫です」と断言する業者にも注意しましょう。とくに「この物件の価値は絶対下がりません」「10年間は家賃を下げなくても大丈夫です」といったように、将来について断言をする業者の話を鵜呑みにしてしまうのは危険です。
不動産物件をあれこれ見ていると、自分の中で「投資をしたい、買いたい」という気持ちが強くなってきます。そういうときは、良い話だけが耳に入りやすくなります。悪質な業者はそれを分かっているため、あえて悪い話は伏せて良いことばかりを断言します。しかしそういうときこそ、一歩引いて冷静になることが必要です。
その意味で、「早く決めないとすぐに埋まりますよ」「次の買い手候補が待っています」などと、急かせるようなことをいう業者にも要注意です。本当はそんなことはないのに、契約をまとめたいためにそう言っていることもよくあります。
業者を見極めるコツ
不動産業者の質を見極めるには、こちらから質問をしたときに、上記と逆のことをしてくれるかどうかを見ればいいのです。
・聞きたいことをきちんと教えてくれる。
・自治体が公開しているデータなど、客観的な根拠を元にして話してくれる。
・将来のことについては、良いことになる可能性も、悪いことになる可能性も、両方教えてくれる。
・結論を急がせず、最終的な判断は買い手に任せてくれる。
こういった態度で一貫している業者であれば、まずは安心できるといえるでしょう。
まとめ
不動産投資にリスクはつきものです。しかし正しい知識があれば、リスクを防いだり、コントロールしたりすることもできます。そのためにこそ、良い不動産業者と付き合い、適切な情報を得ることが大切になります。