消防士の老後のための貯金はいくら必要?

消防士の平均年収から計算すると、定年まで勤め上げたとしても受け取れる公的年金額は月額18.4万円。夫婦なら24.9万円です。

一方、ゆとりある老後生活を過ごすには、毎月36.1万円が必要だとされています。そのため、定年までにある程度の貯金を用意しておかなければ心配です。

本記事では、消防士の年収事情や、ゆとりある老後のために必要な貯金額を準備する方法を解説していきます。

消防士の平均的な年金受給額は、月18.4万円、夫婦で24.9万円

総務省の「令和2年度4月1日地方公務員給与実態調査結果」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/pdf/R2_kyuyo_1_03-2.pdf)によると、消防士の平均年収(給与月額合計+諸手当合計)は、約629万円となります。

この629万円をもとに、将来の公的年金額をシミュレーションしてみます。

(シミュレーションには三井住友銀行の「年金試算シミュレーション」(https://www.smbc.co.jp/kojin/special/nenkin/simulation/)を利用。ただし、国民年金額は令和3年度で月6.5万に修正となっているので、月6.5万円に修正)

・年齢38歳
・男性
・就業開始年齢18歳
・就業終了年齢60歳
・年収(平均年収)629万円

上記の条件で計算すると、本人のみの年金額は月額18.4万円。配偶者が国民年金に40年間加入していれば6.5万円が加算となり、定年退職後の夫婦二人世帯の年金額は月額で約24.9万円となります。

では、この夫婦2人世帯は、定年退職後はどのような生活が送れるのでしょうか?

ゆとりある老後生活に必要な資金は公的年金だけでは不足する

2019年6月に発表された、「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」((https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf))によると、夫65歳、妻60歳の無職高齢世帯の一般的な支出は約26万円となっています。

消防士の夫婦世帯の公的年金額24.9万円とするなら、毎月1.1万円の不足が生じます。つまり、一般的な生活を送るだけでも貯金を取り崩さなくてはならない計算です。

また、生命保険文化センター「生活保障に関する調査/令和元年度」(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1141.html)によると、老後に、旅行やレジャー、趣味や教養を取り入れるなど、ゆとりある老後を送るために必要な金額は、平均で毎月36.1万円となっています。

この金額を消防士の夫婦世帯の公的年金額と対比すると、36.1万円-24.9万円で、11.2万円が毎月不足する計算です。定年退職後の人生を仮に25年とすると、約3,360万円。退職金を2,000万円と仮定して、そのすべて充てたとしても、1,360万円が不足します。

さらに、現在の公的年金制度の受給開始年齢は原則として65歳からです。仮に、60歳で退職して5年間何も収入がない場合は、無職高齢世帯の一般的な生活費26万円×12ヵ月×5年=約1,560万円の貯蓄を定年退職後早々に取り崩すことになります。

そのため、公的年金額は多い傾向がある消防士でも、60歳で定年退職して以後の仕事をせず、ゆとりある老後を送るためには、約1,360万円+約1,560万円=2,920万円、約3,000万円は、自己資金として用意しておきたいと考えられるのです。

不足する老後資金を用意するには、いくら積み立てればいい?

では、仮に定年まで20年間あるとして、目標額の3,000万円を預金で準備すると毎月いくらの積立額が必要になるでしょうか?いま、積立定期預金だと利息は0.01%程度が普通です。20年間積み立てても、利息ではほとんど増えないため、以下のようになります。

【20年間で3,000万円を貯金するために必要な積立額(単位:円)】

金利毎月の積立額元本利息 (税引前)利息 (税引後)
積立定期預金0.01%124,90129,976,24029,98423,897

しかし、現役時代のうちには住宅ローンや、子どもがいれば教育費もかかる時期もあり、毎月約12万円の貯蓄を20年間継続して積み立てていくことは、かなり難しいでしょう。

そこで、より効率的に3,000万円にするためには、投資も取り入れていくことを検討しなければなりません。

運用利回り5%なら、20年間でも月7.3万円でOK

投資を活用にすることで、年3%、または5%の利回りで運用できたとすると、毎月必要な積立額は以下のようになります。

目標額 年間の運用利回り 毎月の積立額
3,000万円 5% 約7.3万円
3,000万円 3% 約9.2万円

夫婦2人であわせてこの金額であれば、さほど無理なく用意できると感じられるのではないでしょうか?

もちろん、上記は20年間で考えているため、30歳から60歳までの30年間運用すれば、もっと積立額は減ります。

では、具体的にどのような投資手段を使えばいいのでしょうか。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

公的年金に上乗せできる年金がiDeCoです。2017年から消防士(公務員)もiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できるようになりました。投資信託などで運用し、給付額が運用結果によって変わる(未確定)の年金です。

運用期間中は投資信託などでの運用益に税金がかからない上、毎月の掛金が全額所得控除となります。さらに、年金受け取り時には退職所得控除が受けられる可能性があるなど、税金の優遇が非常に大きいことがメリットです。

現在、公務員がiDeCoに加入した場合の掛金の上限金額は月額1.2万円(自営業者などは月6.8万円)ですが、2024年12月からは実質的に2万円に引き上げられる予定です。

ただし、iDeCoはあくまで年金制度なので、60歳になるまでの途中換金などはできません。

つみたてNISA

少額投資非課税制度のことで、主に年間投資額120万円までの運用益には対しては税金がかからない「一般NISA口座」と、年間投資額40万円までの運用益に対して税金がかからない「つみたてNISA口座」の2種類があります。老後の生活資金準備という長期的な目標に対しては、非課税期間が20年間のつみたてNISA口座を使った投資が向いているでしょう。

ただし、つみたてNISAは年額40万円、20年間でも800万円までしか投資できず、それだけでは力不足は否めません。

不動産投資

不動産を購入し、入居者に貸し出すことで家賃収入を得る投資方法です。iDeCoやNISA口座を活用した投資とは異なり、資産を増やすというより、毎月安定した家賃収入が入るため、現役時代から退職後まで、毎月の収入に上乗せができる投資です。

不動産投資は、不動産を購入する際にローンを利用します。そのため、不動産投資は、金融機関がお金を貸してくれるかどうかが重要なポイントですが、消防士を含む公務員は収入の安定性から金融機関の審査の場で有利に働く傾向があります。不動産投資は消防士と相性が良い投資方法といえるでしょう。

まとめ

老後を公的年金だけでは生活をしていくことは困難です。また、ゆとりある老後を送るためには、なるべく早い段階から貯金をしておくことが大切です。

しかし、普通預金や積立定期預金といった方法は金利が低いので、あまり大きく増やすことは期待できません。資産を効率的に増やしていくには、つみたてNISAや不動産など、様々な投資手法を検討してみましょう。