不動産投資で収入を得た消防士の税金と確定申告

消防士が不動産投資を行い、家賃収入から一定の所得を得た場合、確定申告が必要になります。今回は、不動産投資でどのような税金が発生するのかを紹介するとともに、確定申告の際に注意すべきポイントについて解説します。

不動産投資に関連する税金

不動産投資に関連する税金は、毎年発生するものと売買時にのみ発生するものに分けられます。

不動産投資をしている間、毎年発生する税金

不動産投資をして家賃収入がある人に、毎年発生する税金は主に以下のものがあります。

・所得税

・住民税

・固定資産税

所得税は所得に応じて課税される税金です。所得とは、おおざっぱにいうと、収入から費用を差し引いた残りの部分です。不動産投資なら、家賃として振り込まれる金額が「収入」で、そこからさまざまな経費を差し引いた残りが「所得」です。

また、税法では、所得は10の種類に分類されており、分類ごとに税金の計算などが異なります。不動産投資で得られた所得は「不動産所得」という区分になります。

住民税は、所得に応じて課せられる所得割と、均等割の2区分があり、都道府県税と市区町村税を合わせた額が住民税全体になります。

固定資産税は、所得に対してではなく、不動産などの資産を「所有していること」に対して課せられる税金です。標準税率が1.4%ですが、お住いの市町村によって実際の税率は異なります。税額は、固定資産税評価額×税率-軽減額により算出可能です。

不動産の売買時にのみかかる税金

不動産の売買時にのみかかる税金もあります。

・登録免許税

・印紙税

・不動産取得税

これらは毎年かかる税金ではありませんが、売買が発生した際は支払いがあることを考慮しておきましょう。

不動産投資で確定申告をしなければならない場合、した方がよい場合

一定の所得がある場合、確定申告は義務となります。また義務ではない場合も、確定申告をすることで課税が減るなど、有利になることもあります。この場合は、した方がいいでしょう。

確定申告をしなければならない場合

その年の不動産所得が20万円を超える場合、確定申告をすることが義務付けられています。

なお、消防士としての給与に対する所得税や住民税の計算と納税は、毎月の源泉徴収と年1回の年末調整で済んでいますので、申告して納税をしなければならないのは、不動産所得についてのみです。

確定申告をした方がいい場合

その年の不動産所得が20万円以下の場合、確定申告をする必要はありません。しかし、申告をするとメリットがある場合があります。

例えば、不動産投資では減価償却費を費用として計上できます。減価償却費を計上することで、税務計算上の所得がマイナス(赤字)になることがあります。

もし、消防士が不動産投資で赤字を出した場合、その赤字を給与所得から差し引くことができます。これを「損益通算」といいます。損益通算をすれば、給与所得を減らせる=給与に対する所得税、住民税の課税を減らせるということになりますので、すでに支払った税金の還付が受けられる場合があります。

確定申告の種類

確定申告には、青色申告と白色申告との種類があります。

青色申告は、複式簿記での帳簿を求められる、また利用するには事前に届出が必要など、ハードルが少し高い方式ですが、その代わり所得控除の特典があります。一方、白色申告は、簡易な方法で申告できますが、所得控除の特典がありません。

青色申告のポイント

・申告方法に応じて、65万円、55万円、10万円の所得控除のいずれかが受けられる。所得控除とは所得を減額できるもので、その分、所得税、住民税の課税を減額できるメリットがある。

・家族へ支払った給与を経費にできる(青色事業専従者給与)

・ある年に赤字が出た場合、翌年以降の黒字から差し引ける(欠損金の繰越控除)。

・複式簿記による帳簿および決算書の作成が必要。

・事前の承認届出が必要。

・不動産所得の場合、65万円または55万円の控除、「青色事業専従者給与」などを受けるためには、「事業的規模」(後述)での投資を行っていることが必要。

白色申告のポイント

・複式簿記の作成が必要なく、簡単な収支内訳書の提出のみで申告できる。

・事前の届出などはとくに必要ない。

・特別な所得控除はない。

不動産投資における「事業的規模」とは?

不動産投資では「事業的規模」と呼ばれる基準を満たしていないと、青色申告での有利な特典をすべて利用することができません。

事業的規模を満たしているかどうかについては、一般に「5棟10室」と呼ばれる基準があり、戸建てや住宅の投資では5棟以上の所有、アパートやマンションへの投資では10室以上の所有を指すとされています。

消防士の不動産投資では、事業的規模は満たせない

公務員の不動産投資は4棟9室以下であることや、家賃収入が年500万円未満であることが副業禁止規定に明記されています。

つまり、消防士の不動産投資は、原則的に、事業的規模に達しない範囲で行うべきだとされているということです。

消防士であれば、不動産投資をしていることが職場に知られることを心配している方もいるかも知れません。

前述した通り、 4棟9室以下であることや、家賃収入が年500万円未満であれば公務員の不動産投資は副業にはあたりません。しかし、それでも心配される方は、確定申告書の「住民税に関する事項」欄にある「自分で納付」に○をつければ、職場での問題はありません。

しかしその場合、職場での源泉徴収での支払いとは別に、自分で住民税を納付することになることを覚えておきましょう。