消防士が投資用マンションに自分で住む場合の留意点

消防士が投資用に購入したマンションが空室なってしまったとき、「自分で住んでもいいかな」と思うことがあるかも知れません。しかし、ローンを組んで購入した物件に自ら居住する場合には、注意点がいくつかあります。

本記事では、混同されやすい「住宅ローン」と「不動産投資ローン」との違いや、投資用マンションに自ら住むことのメリット・デメリットを紹介します。

住宅ローンと不動産投資ローンとの違い

住宅は高額であるため、自己の居住用の住宅でも投資用のマンションでも、通常はローンを組んで融資を受けて購入します。

同じ「住宅」の取得を目的としたローンなのだから、同じものだろうと勘違いされることが多いのですが、実は居住用の住宅を購入するための「住宅ローン」と、投資などの事業用の住宅を購入するためのローン(「不動産投資ローン」「アパートローン」などと呼ばれます)とでは、中身がまったく異なります。

住宅ローンと不動産投資ローンとの違いは、主に次の3点あります。

①不動産の使用目的の違い

どちらも不動産を購入するために借りる点では同じですが、不動産の使用目的が異なります。

不動産投資ローンは、投資を目的にして賃貸用不動産を購入する場合に利用できる投資家向けのローンです。

一方、住宅ローンは自ら居住する不動産を購入する場合にのみ利用できるものです。

②借入条件の違い

・金利:一般的には、住宅ローンの方が金利は低くなります。

・借入上限額:一般的には、不動産投資ローンのほうが借入上限額は高く設定されています。(実際に借りられる金額は購入物件の担保評価や、借りる本人の属性によります)。

・返済期間:一般的には、住宅ローンのほうが長く(最長35年)なります。

(例)りそな銀行の住宅ローン、不動産投資ローン

 住宅ローンりそなアパート・マンションローン(保証会社非保証)
金利変動0.470% 10年固定0.695%変動or固定
利率は審査結果に応じて設定される(1%以上が相場)
借入期間1~35 年1~30年
借入金額100 万円~ 1 億円100~3億円

※2022年2月時点

(りそな銀行Webサイトより
https://www.resonabank.co.jp/kojin/jutaku/shinki/?bank=rb_unite

③審査基準、返済原資の違い

住宅ローンは、借りる人の収入(給与など)から返済してもらうことが前提になっています。したがって、その審査基準や融資上限金額も、年収をベースに考えられます。

一方、不動産投資ローンの場合、購入した不動産は賃貸に出して家賃収入を得ることが前提です。その賃貸経営による収入が返済原資となり、ローンを返済することが基本になります。個人の給与収入や資産も考慮されますが、あくまで賃貸経営をするための融資という考え方です。

もちろんどちらの場合も、不動産そのものの価値も審査対象になります。

投資用マンションに住むことにメリットはあるのか

賃貸住宅に暮らしている消防士が投資用マンションを購入する場合は、「いざとなったら自分が住めばいいや」と思って投資をすることがあるかも知れません。

あるいは、もし投資用マンションが空室になって長期間入居者がないと、「空室にしておいてももったいないから、自分で住んだ方がいいのではないか」と考えることもありえます。

もちろん、自分の所有物ですから、空室であるなら引っ越して住むことはできます(居住者がいる場合には、退去してもらうことは非現実的です)。しかし、投資用マンションに自分が住むことはメリットが少ないので、おすすめはできません。

投資用マンションに住むことがおすすめできない理由

では、なぜ投資用マンションに住むことがおすすめできないのか、その理由を説明します。

①ローン契約違反となる恐れがある

記事の前半で説明したように、投資用マンションを購入する際に利用する不動産投資ローンは、あくまで賃貸経営という事業を行い、そこから得られる家賃収入で返済するということを前提に融資されるものです。

しかし、その物件に自己居住してしまえば、当然ながら家賃収入は得られません。融資審査の前提だった収入が落ちることになるわけです。

そのため、不動産投資ローンを借りて購入した物件に、その返済が終わる前に自己居住していることが金融機関に知られると、契約違反とみなされて融資残高の一括返済を求められる恐れがあります。ただし、事前に金融機関に相談すれば、柔軟に対応してもらえる可能性もあります。

②減価償却費の計上が不可能になる

減価償却とは、投資用不動産の資産の購入代金を数年間に分けて経費計上する方法です。実際に購入費用を支払った年以降は、現金支出がないのに費用を計上できます。そのため利益を圧縮でき、節税につながります。利益がマイナスになれば、給与所得との損益通算もでき、所得税・住民税を節税する効果があります。

しかし、減価償却費が計上できるのは、賃貸事業を行っている場合のみです。自己居住してしまえば、そもそも賃貸事業ではなくなるため、費用という考え方自体ができなくなります。当然、節税効果もなくなります。

③住宅ローン控除は使えず、金利も高い

一方で、住宅ローンで融資を受けた場合には、利用できる「住宅ローン控除」は利用できません。言うまでもなく、住宅ローンと不動産投資ローンは異なるものだからです。

また、先に見たように、融資金利も不動産投資ローンの方が一般的に高くなります。わざわざ不利なローンを借りて購入した不動産を自己居住用に用いることは、メリットがないのです。それならば、最初から住宅ローンで購入した方が有利です。

ただし、住宅ローンで購入できるのは自己居住用不動産に限られ、投資用不動産の購入はできません。もしそれを行うと、やはり契約違反として一括返済が求められます。

つまり、どちらの場合も、目的にあわせたローンを組んで購入するため、目的外で利用することは避けるべきなのです。

まとめ

消防士が投資用マンションに自分で住むことに関しては、可能ではあるものの、メリットがないのでおすすめできない、というのが結論です。

そもそも、投資の段階で入居者が長期間入らないような物件を購入してしまうことが誤りだといえるでしょう。つまり、入居者がしっかりと入り、空室期間が少なく、家賃収入がきちんと得られるような不動産を計画的に購入するべきなのです。

そうすれば、投資用物件に自分で住もうと考える必要もなくなるでしょう。