消防士は公務員の中でも給与が高水準ですが、それでも老後など将来に不安を感じている人は多いのではないでしょうか。
景気悪化による給与や退職金、年金の減額など、心配は尽きません。また、税金や社会保険料の増額、子どもの教育費などを考慮すると、いまのままで本当に老後の資金を蓄えられるのか疑問に感じる人もいるでしょう。
消防士が将来の不安を解消するためには、自分の生涯収入や生涯支出を把握し、老後のためにどれくらいの資金が必要なのかを確かめることから始める必要があります。
そこで今回は、消防士の生涯年収や生涯支出のモデルケースをご紹介するとともに、老後資金のためのライフプランの立て方についても詳しく解説していきます。
消防士の年収だけで本当に十分なのか
消防士は公務員として安定した収入を得ることができます。そのため、定年まで勤めあげれば老後資金は問題ないと考えている人も多いのではないでしょうか。
「地方公務員給与実態調査の概要」(総務省)によると、2019年度の消防士の平均年収は約638万円(38.2歳)となっています。消防士は通常の給与に上乗せされる手当が多いことから、地方公務員の中でも平均年収は高くなっています。(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/cgyousei/kyuuyo/pdf/h31_kyuyo_1_03-2.pdf)
具体的には、「危険作業手当」や「不快作業手当」、「重勤務作業手当」、「非常災害業務手当」「消防業務手当」、「救急出動手当」などが支給されます。一方で、消防士だからと言って必ずしも安定した収入が継続するとは限りません。今後は人口減少や退職金の減額などにより、生涯年収が減少していくことが想定されます。
このように、消防士であっても適切なライフプランを設計しなければ老後資金が不足してしまうリスクがあるのです。老後資金が不足しないか確かめるために、生涯年収と生涯支出を割り出してみましょう。
消防士の生涯収入は約2億8,000万円
現在、雇用延長をせずに60歳で退職した消防士の生涯年収は、給与収入が約2億4,000万円、退職金が約2,000万円で、合計2億6,000万円程度になるようです。
ただし、今後の景気悪化などの要因により、給与収入や退職金が減額される可能性もあります。
また、生涯収入には年金受給額も含めます。消防士は厚生年金となるため、65歳を迎えてから1階部分の老齢基礎年金と2階部分の老齢厚生年金を受給できます。
大学卒業後に消防士になり、23歳から年金を納めていた場合、老齢基礎年金は年額80万円、老齢厚生年金は年額138万円程度です。これらを合計すると、生涯収入は2億8,000万円程度となります。
消防士の生涯支出モデルケース
生涯支出は未婚・既婚、子どもの有無や数などによって大きく変化しますが、ここでは子どものいる2人以上の世帯を例に金額を算出します。
▼主な支出は2億3,000万円以上
総務省の家計調査によると、2020年における2人以上の世帯の支出額は、毎月27万7,926円でした。これを12カ月続けると、年間333万6,000円、60歳まで38年勤務した場合の支出額は合計1億2,600万円となります。(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr-y.pdf「#page=15)
また同調査では、60歳以上の夫婦2人の生活費は毎月約22万円となっており、60歳から85歳までこの生活を続けた場合、合計6,600万円必要になります。さらに、社会保険料や税金の負担も考慮しなければなりません。仮にこれらの合計が120万円だったとすると、60歳までの負担額は4,300万円になります。
これらを合計すると、約2億3,500万円となります。
▼その他の支出も合計すると生涯支出は3億円以上
上記の調査では、住宅費などを支出に入れていないため、別途計算が必要です。
住居費は居住地域や家のタイプによっても大きく費用が異なりますが、ここでは3,000万円と仮定します。
また、子どもが幼稚園から大学まですべて国公立に通った場合、学費は1,000万円程度必要です。当然、私立学校に入学したり、留学をする場合は、それより高額(数倍)になることもあります。
そのほかに、自動車維持費や耐久消費財費などで合計1,500万円、子どもの結婚費用で500万円必要だとします。
これらと上記の主な支出額を合計すると、生涯支出の合計額は3億円になります。
老後2,000万円問題を解決するためにはライフプランを立てる必要
このように、大まかに生涯年収と生涯支出を計算しても、最低2,000万円は収入が不足していることが分かります。教育費や居住費が高額になる場合は、これ以上に資金が不足することも考えられます。
厚生労働省が老後に2,000万円以上の資金が不足するとして話題になった「老後2,000万円問題」は、夫婦が95歳まで生きた場合に不足する金額のことです。
この問題は安定した収入を得られる消防士であっても無関係ではありません。年金や退職金、給与の減額により、今後は消防士も老後のことを考え、適切なライフプランを立てていかなくてはならないのです。
消防士のライフプランの立て方
消防士は雇用が安定しているため、ライフプランが立てやすいという特徴があります。ライフプランを立てる上では、自分だけでなく家族のライフイベントも盛り込み、家計としてどの時期にどのような収支になるのかを明確にすることが大切です。
例えば以下の表では、自分と配偶者、子ども1人の3人家族を想定し、ライフプランを立てています。それぞれの年齢、その年に起こるライフイベントを一覧にすることで、どの時期にどのくらいお金が必要か理解できます。

ライフプランの中でもとくに大きなイベントがマイホームの購入と子どもの学校入学です。
マイホームについては、多くの消防士は遠方に転勤することがないことから、購入時期についてある程度目途をつけておくことができます。また、子どもの教育費は私立・公立で大きく費用が異なります。ライフプランは何通りか用意し、各条件の差によってどのくらい支出に差が出るのか確かめてみるのもいいでしょう。
資産運用が老後資金の不足を補うカギに
ライフプランを立てる際には、消防士としてのキャリアに影響が及ばないよう、無理のないプランを立てる必要があります。また、老後の資金不足を補うためには、貯蓄だけでなく長期的な資産形成も検討してみましょう。
▼消防士としての仕事に影響が出ないライフプランを考える
ライフプランを立てる際には、消防士としての本業に支障を来すプランを立ててはいけません。
例えば、ある時期に収入の不足が見込まれるからと言って、公務員として禁止されている副業をしてしまうとキャリアを台無しにしてしまいかねません。また、無理な支出の削減や残業は家族関係に不和をもたらす可能性があります。
ライフプランはある時期だけに焦点を当てるのではなく、長期的な視点に立って少しずつ資産を増やすために活用しましょう。
▼老後に向けた早めの資産形成を
消防士は安定した収入を確保できるものの、将来的な給与や退職金、年金の減少により必ずしも安泰とは言えません。しかし、消防士は公務員であるため、副業に制限があります。では、消防士はどのように老後の資金を準備すれば良いのでしょうか。
その答えが資産運用です。
消防士は地方公務員の中でも給与が高いため、より多くの資金を資産運用に回すことができるでしょう。公務員であっても将来安泰とは言えないいまの時代には、老後に向けた早めの資産形成が何より大切なのです。
